眠らない街にしちゃァ、若干閑散とした一角。
ここには「かぶき町」の、あのむせ返るような色香はねェ。
むしろ、郊外のような雰囲気さえ漂ってるぐらいだ。
この辺にさしかかると妙に落ち着くのは、何でだかな。
無意識に張り巡らせていた警戒の糸が、プツンと切れる。
ひしめき合う屋根からやっと覗く空を、笑い飛ばすかのような。
一帯の穏やかな雰囲気をブチ壊す、汚ェ文字。
道行く者に充分すぎるほどアピールする、大胆で雑な筆遣い。
そんな騒々しい看板のかかった、その2階。
妙に落ち着く原因がそこにあるなんて、死んでも認めたくねェけどな。
アイツがいるからホッとするなんて…
「万事屋銀ちゃん」
名前からして胡散臭ェ、その当人を見ても更に期待できねェ。
まぁ、それにどうこう仕掛けようとする俺も大概だってこった。
自分自身にひとしきり呆れながら、軋む階段を踏む。
アイツはいるだろうか。
年中定休日の万事屋だしな。
どうせお妙の弟にシバかれながら、チャイナ娘に悪態つかれながら、ジャンプでも読みふけってんだろ。
万事屋…
古くさい玄関のチャイムがけたたましく鳴り、程なくして重い足音が近付いてきた。
その足音に比例して高鳴る鼓動。何度訪れても慣れねェ。
アイツの汚ェツラが見えるまでの、この数秒間。
ガラにもなく緊張してやがる。
「あー…どちらさん?」
ガラリと扉が開き、白い頭が視界を明るくする。
思った通りの腑抜けヅラ。
まったく、俺と同じぐらいの年だってのに、なんだ、このガキ臭さ。
それでいて既にオヤジの習性も備わってんだから、もう救いようもねェな。
そうやって馬鹿にしながら、つい頬が緩む。
相手が俺だと認識した途端に、万事屋の視線は伏せられる。
それをほんの少しでも可愛いと思う俺は、もう男としてどうなのか。
「よォ」
「あァ」
俺達には、これで充分。
好きとか嫌いとか、そんなんじゃねェ。
仲間でも友達でも、ましてやそれ以上でもねェ。
それでも、考えてることなんざ、お互いにわかってる。
どうだ、この気色悪ィ関係。
無言で踵を返す万事屋に肯定の意味を読んで、俺は後ろ手に玄関の扉を閉めた。
俺とアイツの知名度。
アイツのかぶき町での知名度つったら、かなりのモンだからな。
妙な人望があって、一度知り合うと何だかんだで敵にはならねェ。
そんな奴が真選組の副長としょっちゅう一緒にいたんじゃ、噂のひとつもたっちまう。
内輪じゃ、犬猿の仲で通ってるんだ。
今更だろ。
しかも、万事屋も野郎だ。
どうせ先のねェ仲なら、俺だってむやみに自分の身を危険にさらしたくねェしな。
変な噂で首切られちゃかなわねェ。
でも…
こうして相手してくれる間は、それに甘えていてェんだ。
「…で?」
部屋の敷居に差し掛かってチラリと辺りを見回す。
ガキどもはどうした?
いねェのか?
「まさか、真面目に相談事や依頼ってワケでもねェだろ」
勇んで、来てはみたが…
「また、ここでボーーーーっとして帰ンのかよ」
数歩先の万事屋が、振り返る。
いざ、万事屋を目の前にすると、どうしたらいいかわからなくなる。
毎度のことだ。
何をしゃべるでもなく。
近藤さんや総悟でもいれば、ノリで悪態でもつけるんだけどな。
でも万事屋も、こういうときは突っかかってはこねェ。
ただ、俺の妙な振る舞いを見ながら、俺の言葉を待つ。
とんちんかんな俺の問いかけにも、律儀に答えてくれる。
普段の態度とは大違いで、調子も狂う。
でも俺はコイツとサシで会いたがるんだ。
俺はこうやってここに来て、コイツと何がしたいんだ?
いつも思う。
ロクに話もしねェで、満足なんかしてねェ。
かと言って、特に聞かせたい話題があるわけでもねェんだ。
でも、俺は確かに「それより先」を望んでる。
その「先」ってのが、何なのかはわからねェが。
「アイツらなら買い物に行ったばっかりだぜ?」
「?!!!」
「ち、近いわっっっ!!!!!」
ぐちゃぐちゃ考えてるうちに、万事屋のツラが目の前まで迫ってた。
真面目なような、ふざけたような。
微妙な表情。
「何、焦ってんの」
壁際に追い詰めた俺を、更に床に縫い付ける。
俺はその視線に逆らえず、ズルズルと座り込んじまった。
「な、何っ?!」
「何って…もっと俺に近付きてェクセに」
「は、はァ?!!テメ、アホかっ!」
ふ・・・・・・と、万事屋が笑った。
「お前よりマシだよ」
完全な上から目線。
ただ、座り込んだ俺を見下ろしてるってんじゃねェ。
何かを把握しきったような、勝者の微笑み。
今のこの空気を牛耳るつもりだな…
させるかよ…
「バカにすんじゃねェ!!!」
邪魔な万事屋の体を払おうとした拳も、あっさり掴まれた。
「・・・・・・・・・っ」
「バカになんかしてねェよ」
「嘘つけ…」
「嘘じゃねェよ」
「ゃ、やめろ…」
「土方」
反則だぜ、そんなの。
いつも「オイ」とか「お前」とか、そんな呼び方しかしねェくせに。
「な、何だよ」
「俺の名前言ってみて…」
「は?」
「知ってるでしょ?」
「さ、坂田銀時?」
「・・・・・・・・・・・・・」
あ、あれ?
俺、なんか変だったか?
間違ってねェよな??
「ちょっと、お前そりゃねェって…」
「な、何がだよっ!」
「お前さ、そんなツラして意外と疎いのな」
「だから何がっ!!!」
「?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
怒鳴る俺を宥めるように…
キスされた。
「なァ…」
「俺のこと好きだろ?」
コイツ…
何言ってんだ?
ウンコ天パのくせしやがって。
調子のんなよ?
俺がお前を好きだって?
そんな…
「外じゃ俺といられねェから、いつもウチに来てくれてんだろ?」
「ここで見るお前って、いつもと全然違って可愛いんだぜ?」
「恋する少女みてェにな」
世界中が笑うわ。
俺が恋する少女だと?
お前のその目は節穴ですらねェ。
死んだ魚そのものだな。
「アホ・・・・」
それでも俺は呆然としていた。
一言つぶやくのがやっと。
「嫌でもなかったろ?」
「・・・・・・・・・・」
「結構前から気付いてたけどな…お前の口から聞きたかったのよ」
「・・・・・何をだ」
一瞬の表情。
ほんの少し寂しそうな。
諦めの色も含まれた複雑な微笑で、万事屋は軽くため息をついた。
「何を…だろうな」
言いながら、俺に向き直る。
その瞳に、身体の芯が疼いた。
俺の中の男の部分が、確実に反応したんだ。
あァ…
わかった。
俺、コイツにとんでもねェ欲望を抱いてるな。
「貴様の願いが叶う・・・対象に向かって3度念じろ」
万事屋と…
ヤりてェ…
ヤりてェ…
ヤりてェ…
半信半疑。
でもどこか照れた気持ちで万事屋を見た。
こんなぐらいで、人の気持ちが左右されるもんかよ。
でも、もし本当だったら…
「土方…」
「っ…!ぁ、な、何…」
即効かよ。
万事屋のあまりの色気のある声に、背筋がゾクリとした。
その目はどこか虚ろで、ボーっと瞳孔が開いてるようにも見える。
「もう俺、充分我慢したよな?」
は?
何を…
「お前がこうして時々ウチに来るようになって、どれぐらいになる?」
「ま、まァ…結構経つな…」
「3…いや、明後日で4ヶ月だ」
そんなもん、よく覚えてんな。
「だから…なァ…?」
俺を壁に打ちつける手に力が込められた。
またキスされると、思わず目を瞑ったが…
「っっ!!!」
万事屋は俺の髪を荒く掴んで、頭をムリヤリ横にひん曲げる。
晒された首筋にかじりつき、俺の身体を飴のように舐め溶かしていく。
それにしたって、本能で動いてるにしちゃ、ちょっと巧すぎねェか?
コイツ、もしかして男慣れしてるとか。
いや、ありえねェ。
万事屋の片手は胸を彷徨い、不意に乳首を摘み上げられた。
「…ぁ…っ」
忘れかけていた、他人からの愛撫に思わず声が出た。
自分を疑うような甘い声。
ヤベェ…
早く立て直さねェと。
「銀さんにこんなコトしたいんでしょ?」
「ぅるせ…ェ…」
舐められる耳に意識が集中しちまって、つい抵抗する力が弱まった。
おもむろに股間を弄る指。
積極的ってのも悪くねェ。
「俺のココ、こうやってさ…」
意外と巧い万事屋に、俺はなすがままだった。
壁に背を預けてた俺は、結局そのまま倒れ込み、万事屋の指をただ濡らすだけ。
緩く扱く手は、吐き出すほどの強い刺激をくれねェ。
そのじれったい快感を追いすぎて、俺はズボンずり下げられてることにも気付いてねェ。
「俺だったら、もうちょっと強い方がいいかなァ」
「ぉ、俺…も…」
「ん?」
「も…っと、強く…」
その恐ろしい微笑みが、視界の蕩けた俺にはわからなかった。
「俺、こういうのが好き…こうやって…」
さすがは野郎。
何もかもわかりすぎてる。
「ぁ、あ…っ」
さっきとは違う、明らかに遂情を誘う指の動き。
意味もなく堪えようと床を掻き毟っても、あふれる精液は増すだけ。
コイツ、こういうやり方が好きなのか…
そうか…
俺も…
嫌いじゃねェみてェ。
もう…
ダメ…だ…
「ぁ… っっ!!!!!」
「ホラ…ね?俺と一緒」
白く濡れた指をこれ見よがしに舐める万事屋。
もう、死ぬほど悔しくて恥ずかしい。
今すぐ、万事屋の記憶を抜き取って、この場から消え去りてェ。
泣かせてやろうって相手に、こんなにされて。
「お前、なんでそんなに素直じゃねェの」
「・・・・・・」
「俺はずっと前から気付いてたぜ?言われるまで待ってたけど…」
「…何」
「2人きりになった時のお前…凄い目で俺のこと見てるんだぜ?」
「…っっ!!!」
不意に息を飲み込んだ。
想像だにしねェところに指の感触。
「お前も男だしさ、俺のこと可愛いとか喘がせてェとか思ってたんだろうけどよ」
「っ、あ…ぁ、やめ…ろ…」
「ホントはそんなんじゃねェんだろ?」
「何がっ…ぁ、指、ゃ…っ」
可愛いとも思った。
喘がせてェとも思った。
とにかく、コイツのそういう感じてる顔が見たかったんだ。
俺によって昇りつめるコイツが見たかった。
何が違うってんだ。
「ぁ、あぁあああぁああぁぁっ?!!」
「土方君さァ…」
身体の芯に走る電撃。
コイツに出会わなければ、きっと一生知らなかった急所。
こんなトコに…
「まだわかんないの?」
何がだよ!!
俺のどこがおかしいってんだ?
そりゃ、野郎のテメェをどうこうしてやりてェなんて、気違いとしか思えねェけどな。
でも、それだけだろ。
相手がテメェだって事以外、何の問題もねェはずだ。
思いっきりゲキ飛ばしてやりたくても、中の急所を指でグイグイ押してきやがって…
「万事…ゃ…あ、マジ、やめ…」
「こんなに締め付けてくれちゃって…」
「も…ゃ、あ、ィ…ク」
中の刺激があまりに強くて…
その強さも絶妙で…
万事屋の腕を握り締めて懇願した。
「よく自分の姿見てみろよ」
その声に少しだけ我に返った。
快感を追うだけの自分の身体を、改めて見回す。
「ぁ、ゃ…違っ…」
ケツん中弄ってもらうために、惜しげもなく開かれた両脚。
既に2発目を蓄えきった股間に、唖然とした。
「…な?何か変だろ?」
嘘だろ…
そんな、この俺が…
それは、ひとつだけ願いが叶うという。
その願いが困難であればあるほど…
その代償が身に降りかかるという。
まさか…
その「代償」ってのが、コレなのか?
あァ…
俺としたことが。
こんなところでしくじるなんてな。
コイツとどうこうしてェ気持ちに急かされて、ツメが甘かったか。
「コイツを犯してェ」
って、願うべきだった。
もう、今更遅ェけどな。
俺の身体も心も、コイツの身体も心も。
あ、いや…
コイツの心は、ねェか。
「認めたかよ…」
ガッチリと目が合った。
万事屋と目が合うことなんざ、珍しくも何ともねェ。
日頃からガンくれてやってるからな。
でも、目の前の万事屋のツラが、異常に男を感じさせやがった。
いや、どっちかって言うと男より雄だな。
まさか俺がこんな風に感じるなんて、思ってもみなかったよ。
「なァ…」
「 っ!!」
「コレ…」
引き寄せられて握らされたものは、その一瞬でわかるほど立派だった。
宝の持ち腐れってのは、まさにこのことだな。
こんなにデカくて硬くて…
相手の女、絶対悦ぶに決まってんのにな。
勿体ねェ…
そう思った途端、俺の中に感じたこともねェ感覚が覚醒した。
あるはずもねェ、女の感覚が。
野郎の生臭ェチンポを旨そうだと思っちまう。
涎が止まらねェ。
俺のすべてで万事屋を受け止めたくて、その口さえ開いた。
焦るように万事屋のズボンを脱がしにかかると、死んだ魚の目は少し驚いて見せた。
期待通りのエグさを湛えたブツ。
自分自身のでさえ、こんなにまじまじと見たことはねェ。
ホント、卑猥な形してやがるよな。
何がどう合理的だって、こんな形になったんだ?
目の前のブッてェ肉棒に、思わず喉が鳴る。
こんなに何かにしゃぶりつきてェと思ったことなんか、一度もねェよ。
でも、一度欲しいと思ったら、もう止まらなかった。
しとどに濡れた唇で一気に喉まで送らせる。
信じらんねェ…
俺…
チンポ咥えて、気持ち悪ィどころか発情してるじゃねェかよ。
さっきから俺の中の女の部分が、万事屋の雄を感じてビクビクしてる。
自分だったらこうされてェと、ひたすら万事屋を誘う。
「お前、エロ…」
初めて見る万事屋の表情が、やたらと俺の腰を刺激する。
気持ち悪いようなくすぐったいような万事屋の指で、俺の中は明らかに変わり始めた。
たまに掠めるイイトコに、物足りなささえ感じるようになってたりして。
もっと強い、太いのが欲しい。
確実な衝撃をくれるものが。
あァ…
そうだ。
コレがいいや。
「ん?どうした?」
「よ、万事屋…」
「?」
「コレ…指じゃなくて…」
「・・・・・・・」
「コレで…俺を…っ」
舌から糸を引かせて、気持ち悪ィぐらい求めてみせた。
「お前さ・・・・・・」
やっぱり、それはマズかったか?
さすがにコイツでも引いたかな。
「俺が…気の遠くなるような我慢をしてるってェのに」
は?
「そんな可愛い顔で誘うんじゃねェよ」
コイツ、何言ってんだ。
「せっかく布団ぐらい敷いてやろうと思ってたのに」
「ちょ…テメ…」
「気持ち悪くねェかとか、痛くねェかとか、もういろんなこと心配してたってのによォ…」
「ぁ、やめ、ろ…っ」
俺の抵抗の声に耳もくれず、万事屋は俺を壁にもたれかけて座らせた。
目の前の万事屋は俺の下に腰を入れ、俺を抱きかかえる。
何がやりてェんだ?
「自分を制御できねェ俺が悪ィけど…」
「自覚のねェお前だって悪ィんだぜ?」
「何…っ…」
腰を強く掴まれ、身の毛の弥立つような感触をケツに感じた。
ちょっと待て。
マジかよ…
「っ、あ…ァ ぁあああァあぁアあっ?!!」
そりゃ、欲しかったけど。
俺からせがんだけど。
どうしよう…って、考える暇もなかった。
うわ…
万事屋が…
「すっげェ…中、ギュンギュン締まる」
「ぁ、アホ…っ」
あれだけ指で弄くられてたもんだから、痛みこそさほどねェが、身体の抵抗は半端ねェ。
それでも、自分を犯す男のツラを間近で見るのはキツイ。
俺の情けねェ表情もコイツにモロ見られてるってワケだし。
「土方…」
まただ。
この声。
思わず肩がビクリと震えた。
「悪ィな…」
「なっ、にが…っ」
万事屋の表情が少し苦しそうなのは、快感のせいか、それとも違うのか。
短い吐息の合間に、途切れ途切れに紡がれる。
「コレ、お前苦しいだけだよな」
「?」
「野郎のお前に抱かれる悦びなんざあるわけねェ」
「・・・・・・・・」
そうでもねェと言うのも恥ずかしくて、俺は目を逸らした。
だいたい、察しろってんだ。
俺がこんな簡単に掘られる男だと思うか?
苦しいとわかってる行為を甘んじて受け入れてるのは、他でもねェ。
それは、お前が…
「ゴメンな…俺、気持ちよくて堪んねェわ」
「・・・・っ!!!!」
完全に胎ン中で感じた。
そう。
俺がほしかったものはコレなんだ。
この際、俺が女だろうがそんなのどうでもいい。
俺に感じて。
俺で感じて。
俺を感じて。
最後の瞬間は、お前ン中俺だけにしてほしい。
「ん…この体勢、動きにくいなァ」
「ぁ、え?あァ?!」
「よいしょ…っと」
「ぅ、わ!!!」
体重を冷たい床に預け、視界にはもう万事屋だけ。
天井さえ見えやしねェ。
俺の顔の両脇につかれた万事屋の腕。
ツラを見るのが恥ずかしくて少し右にそむければ、コイツの象徴とも言える青いウズマキ柄。
それさえ俺の脳内を犯す。
もう、どこを見ても俺には万事屋しか感じられねェ。
「もっと他に燃える体位もあるんだろうけどよ」
万事屋の動きに揺れる身体。
「正常位…って、よく言ったモンだな」
しかも、結構当たる。
チンポの形の何がどう合理的だと思ったが、スゲェじゃねェかよ。
もう、ホントにスゲェ。
「ぁ、あァ…っ…」
噛んでも噛んでも噛み切れねェ。
いつの間にか快感に変わった苦しみは、余計に俺を狂わせた。
「ょ、万事屋ァ…っ」
「なに…」
「こんな、俺っ、終わったら…忘れろ、よ…っ」
そんな趣味も性癖もねェだろうコイツに、俺との情事なんざ気持ち悪ィ以外の何でもねェはずだ。
ただ溜まってたんだろう。
攘夷の粉のせいだろう。
あの薬がどう作用してるか知らねェが、無理やり体動かされてるに違いねェ。
だから、こんな俺の姿…
あとでキレイさっぱり忘れてくれ。
正直、俺はテメェを失いたくねェんだ。
「はは…っ」
それは、翳りのねェ純粋な笑顔。
「忘れてなんかやらねェよ」
「あ、ぅあァ…ん、ぁあ!あぁァ…っ、あ、あッ!!!」
「土方…」
「も…そこ…ダ、メ…っっ」
普段の腑抜けた瞳孔を絞らせ、身を喰いちぎるように奥を抉る。
濡れねェ俺の身体が淫猥な音を立ててやがる。
コイツも結構キてんな?
「なァ…俺の名前、知ってる?」
「しつ、っけェ…って」
「呼んでよ…」
唇を噛んで抗って見せれば、突き上げはさらに強く速くなった。
もう、前立腺しか狙ってこねェ。
万事屋のデカいカリが物凄ェ引っかかって、目が眩みそうになる。
快感を引きずり出す万事屋の腰が、俺を一気に絶頂へ追い上げた。
「ょろ、ず…屋ァ…あ、ィ…ク…」
「ねェ…頼むから…」
「ァ、あぁァあっ!!万事屋ァっ!!!」
「ん…悪ィ…俺、中に出す…」
もう勝手にしやがれ。
精液でも何でも全部中にブチまけろ。
テメェの何もかも俺にくれよ。
他の誰にもくれてやるな。
「もぅ…イキそ…」
願わくば、その魂も。
「十四郎…ッ…」
その言葉に、僅かな理性も吹き飛んじまった。
銀時…
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
銀時
「ぎ…銀時…」
万事屋の背筋がビクリとはね、噛み締められた奥歯から喘ぎ声が漏れた。
狂ったように肉壁を擦られ、前立腺を潰される。
ケツに打ち付けられる腰の強さが、ただ俺を興奮させた。
性欲に蹂躙された野郎二人の可愛くもねェ嬌声が、じっとりと湿った部屋に響き渡る。
「ぁ、ィ、イク…っ…!!!!!」
叫んだのは俺だったか万事屋だったか。
それまで信じられねェ速さで俺の中を犯してた万事屋。
深く奥へと激しく捩じ込んできやがった。
確実に俺を孕ませるように、肉杭を強く強く。
もっと欲しくて、床を掻いていた手で万事屋を抱き寄せた。
「ァあぁあ、ぁあ、ア、あああっ、ァあ…ぁああぁアアぁアあああ!!!!!」
それはもう…
この世のものとは思えねェ快感。
「銀ッ と き !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
腰の奥で蠢いていた衝動が脳天を突き破り、思考回路が焼き切れた。
ビクビクと身体を震わせて、年甲斐もなく精液を噴き上げた。
感じるまま、何度も。
俺の奥にガツンガツン当てながら注ぎ込まれた精液に、もう一度イカされて。
俺の意識もトロリと蕩けてなくなっちまった。
ふと気がつくと、見知らぬ天井。
傍にあった時計に目をやったが、思ったほど寝てねェ。
頭ン中整理しているうちに、襖からのっそりと万事屋が現れた。
手には、1リットルの「イチゴ牛乳」。
「飲むか?」
一線越えた者同士の、あの独特の距離感。
近しいでもなく、馴れ馴れしいでもねェ。
アイツが俺の中に一歩踏み込んできたその心地よさに、つい頬が緩んだ。
「お前さ、今日時間あんのか?」
あ、そう言えば、近藤さんが9時から飲み会するからって…
「まぁ、少しは…」
「じゃあ、もうちょっといろよ」
「は?」
「あ、それと…コレやる」
そう言って寄越したのは、スーパーの袋。
中にはマヨネーズが1本。
「さっきお前が寝てる間に行ってきた…まさか今日来るとは思ってなかったからよ」
「え…何?怖…」
「別に裏なんかねェよ!失敬な!!!」
いや、だってテメェが俺にこんな…
ありえねェだろ!!
怪訝な表情をやめずにいると、万事屋が不貞腐れたように口を開いた。
「おめでとうって言ってんだ…」