眠らない街にしちゃァ、若干閑散とした一角。

 

 


ここには「かぶき町」の、あのむせ返るような色香はねェ。
むしろ、郊外のような雰囲気さえ漂ってるぐらいだ。

この辺にさしかかると妙に落ち着くのは、何でだかな。

 

 


無意識に張り巡らせていた警戒の糸が、プツンと切れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ひしめき合う屋根からやっと覗く空を、笑い飛ばすかのような。
一帯の穏やかな雰囲気をブチ壊す、汚ェ文字。
道行く者に充分すぎるほどアピールする、大胆で雑な筆遣い。

そんな騒々しい看板のかかった、その2階。

 

 


妙に落ち着く原因がそこにあるなんて、死んでも認めたくねェけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイツがいるからホッとするなんて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「万事屋銀ちゃん」

 

 


名前からして胡散臭ェ、その当人を見ても更に期待できねェ。
まぁ、それにどうこう仕掛けようとする俺も大概だってこった。

 

自分自身にひとしきり呆れながら、軋む階段を踏む。

 

 


アイツはいるだろうか。
年中定休日の万事屋だしな。
どうせお妙の弟にシバかれながら、チャイナ娘に悪態つかれながら、ジャンプでも読みふけってんだろ。

 

 

 

 

 


万事屋…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古くさい玄関のチャイムがけたたましく鳴り、程なくして重い足音が近付いてきた。


その足音に比例して高鳴る鼓動。何度訪れても慣れねェ。
アイツの汚ェツラが見えるまでの、この数秒間。
ガラにもなく緊張してやがる。

 

 

 

 

 

「あー…どちらさん?」

 


ガラリと扉が開き、白い頭が視界を明るくする。

思った通りの腑抜けヅラ。

まったく、俺と同じぐらいの年だってのに、なんだ、このガキ臭さ。
それでいて既にオヤジの習性も備わってんだから、もう救いようもねェな。
そうやって馬鹿にしながら、つい頬が緩む。

 

 

 

 

 

 

 

相手が俺だと認識した途端に、万事屋の視線は伏せられる。

それをほんの少しでも可愛いと思う俺は、もう男としてどうなのか。

 

 

 

 

 

 

 

「よォ」

 

 

 

 

「あァ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達には、これで充分。

 

好きとか嫌いとか、そんなんじゃねェ。
仲間でも友達でも、ましてやそれ以上でもねェ。
それでも、考えてることなんざ、お互いにわかってる。
どうだ、この気色悪ィ関係。

無言で踵を返す万事屋に肯定の意味を読んで、俺は後ろ手に玄関の扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

俺とアイツの知名度。


アイツのかぶき町での知名度つったら、かなりのモンだからな。
妙な人望があって、一度知り合うと何だかんだで敵にはならねェ。
そんな奴が真選組の副長としょっちゅう一緒にいたんじゃ、噂のひとつもたっちまう。

内輪じゃ、犬猿の仲で通ってるんだ。
今更だろ。

しかも、万事屋も野郎だ。
どうせ先のねェ仲なら、俺だってむやみに自分の身を危険にさらしたくねェしな。
変な噂で首切られちゃかなわねェ。

 

 

 

 

 

 

でも…


こうして相手してくれる間は、それに甘えていてェんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「…で?」

 

部屋の敷居に差し掛かってチラリと辺りを見回す。

ガキどもはどうした?
いねェのか?

「まさか、真面目に相談事や依頼ってワケでもねェだろ」

勇んで、来てはみたが…

 

「また、ここでボーーーーっとして帰ンのかよ」

数歩先の万事屋が、振り返る。

 

 

いざ、万事屋を目の前にすると、どうしたらいいかわからなくなる。
毎度のことだ。

何をしゃべるでもなく。
近藤さんや総悟でもいれば、ノリで悪態でもつけるんだけどな。
でも万事屋も、こういうときは突っかかってはこねェ。
ただ、俺の妙な振る舞いを見ながら、俺の言葉を待つ。
とんちんかんな俺の問いかけにも、律儀に答えてくれる。

普段の態度とは大違いで、調子も狂う。
でも俺はコイツとサシで会いたがるんだ。

 

俺はこうやってここに来て、コイツと何がしたいんだ?

いつも思う。
ロクに話もしねェで、満足なんかしてねェ。
かと言って、特に聞かせたい話題があるわけでもねェんだ。

 

でも、俺は確かに「それより先」を望んでる。

 

 

 

 

その「先」ってのが、何なのかはわからねェが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらなら買い物に行ったばっかりだぜ?」

「?!!!」

 

「ち、近いわっっっ!!!!!」

ぐちゃぐちゃ考えてるうちに、万事屋のツラが目の前まで迫ってた。
真面目なような、ふざけたような。

微妙な表情。


「何、焦ってんの」

壁際に追い詰めた俺を、更に床に縫い付ける。
俺はその視線に逆らえず、ズルズルと座り込んじまった。


「な、何っ?!」

「何って…もっと俺に近付きてェクセに」
「は、はァ?!!テメ、アホかっ!」

 

ふ・・・・・・と、万事屋が笑った。

「お前よりマシだよ」

 

 

完全な上から目線。
ただ、座り込んだ俺を見下ろしてるってんじゃねェ。
何かを把握しきったような、勝者の微笑み。

今のこの空気を牛耳るつもりだな…

させるかよ…

 

 

 

「バカにすんじゃねェ!!!」

 

 

邪魔な万事屋の体を払おうとした拳も、あっさり掴まれた。

「・・・・・・・・・っ」


「バカになんかしてねェよ」
「嘘つけ…」
「嘘じゃねェよ」
「ゃ、やめろ…」


「土方」


反則だぜ、そんなの。
いつも「オイ」とか「お前」とか、そんな呼び方しかしねェくせに。


「な、何だよ」

「俺の名前言ってみて…」
「は?」
「知ってるでしょ?」
「さ、坂田銀時?」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 


あ、あれ?

俺、なんか変だったか?
間違ってねェよな??

 

「ちょっと、お前そりゃねェって…」
「な、何がだよっ!」
「お前さ、そんなツラして意外と疎いのな」


「だから何がっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒鳴る俺を宥めるように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


キスされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なァ…」

「俺のこと好きだろ?」


コイツ…
何言ってんだ?

ウンコ天パのくせしやがって。
調子のんなよ?
俺がお前を好きだって?


そんな…

 

 


「外じゃ俺といられねェから、いつもウチに来てくれてんだろ?」

「ここで見るお前って、いつもと全然違って可愛いんだぜ?」


「恋する少女みてェにな」

 


世界中が笑うわ。
俺が恋する少女だと?

お前のその目は節穴ですらねェ。
死んだ魚そのものだな。


「アホ・・・・」

それでも俺は呆然としていた。
一言つぶやくのがやっと。

 

「嫌でもなかったろ?」
「・・・・・・・・・・」
「結構前から気付いてたけどな…お前の口から聞きたかったのよ」
「・・・・・何をだ」


一瞬の表情。

ほんの少し寂しそうな。
諦めの色も含まれた複雑な微笑で、万事屋は軽くため息をついた。

「何を…だろうな」 

言いながら、俺に向き直る。
その瞳に、身体の芯が疼いた。

 

俺の中の男の部分が、確実に反応したんだ。

 

 

 

 

 


あァ…

わかった。

 

 

 

俺、コイツにとんでもねェ欲望を抱いてるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「貴様の願いが叶う・・・対象に向かって3度念じろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


万事屋と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤりてェ…


ヤりてェ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤりてェ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半信半疑。
でもどこか照れた気持ちで万事屋を見た。
こんなぐらいで、人の気持ちが左右されるもんかよ。

でも、もし本当だったら…

 

「土方…」

「っ…!ぁ、な、何…」

即効かよ。
万事屋のあまりの色気のある声に、背筋がゾクリとした。
その目はどこか虚ろで、ボーっと瞳孔が開いてるようにも見える。

「もう俺、充分我慢したよな?」


は?

何を…

 

「お前がこうして時々ウチに来るようになって、どれぐらいになる?」
「ま、まァ…結構経つな…」
「3…いや、明後日で4ヶ月だ」

そんなもん、よく覚えてんな。

「だから…なァ…?」

俺を壁に打ちつける手に力が込められた。
またキスされると、思わず目を瞑ったが…

 

「っっ!!!」

 


万事屋は俺の髪を荒く掴んで、頭をムリヤリ横にひん曲げる。
晒された首筋にかじりつき、俺の身体を飴のように舐め溶かしていく。
それにしたって、本能で動いてるにしちゃ、ちょっと巧すぎねェか?
コイツ、もしかして男慣れしてるとか。
いや、ありえねェ。

万事屋の片手は胸を彷徨い、不意に乳首を摘み上げられた。

 

「…ぁ…っ」

 

忘れかけていた、他人からの愛撫に思わず声が出た。

自分を疑うような甘い声。
ヤベェ…
早く立て直さねェと。

 

「銀さんにこんなコトしたいんでしょ?」

「ぅるせ…ェ…」

舐められる耳に意識が集中しちまって、つい抵抗する力が弱まった。

おもむろに股間を弄る指。
積極的ってのも悪くねェ。

「俺のココ、こうやってさ…」


意外と巧い万事屋に、俺はなすがままだった。
壁に背を預けてた俺は、結局そのまま倒れ込み、万事屋の指をただ濡らすだけ。
緩く扱く手は、吐き出すほどの強い刺激をくれねェ。
そのじれったい快感を追いすぎて、俺はズボンずり下げられてることにも気付いてねェ。

「俺だったら、もうちょっと強い方がいいかなァ」

 

 

「ぉ、俺…も…」

「ん?」

 

「も…っと、強く…」

 

その恐ろしい微笑みが、視界の蕩けた俺にはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、こういうのが好き…こうやって…」

さすがは野郎。
何もかもわかりすぎてる。

「ぁ、あ…っ」

さっきとは違う、明らかに遂情を誘う指の動き。
意味もなく堪えようと床を掻き毟っても、あふれる精液は増すだけ。

コイツ、こういうやり方が好きなのか…
そうか…

俺も…
嫌いじゃねェみてェ。

 


もう…

 

 

 

 

ダメ…だ…

 

 

 

 

「ぁ…    っっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「ホラ…ね?俺と一緒」

 

 

 

 

白く濡れた指をこれ見よがしに舐める万事屋。


もう、死ぬほど悔しくて恥ずかしい。
今すぐ、万事屋の記憶を抜き取って、この場から消え去りてェ。
泣かせてやろうって相手に、こんなにされて。

「お前、なんでそんなに素直じゃねェの」
「・・・・・・」
「俺はずっと前から気付いてたぜ?言われるまで待ってたけど…」
「…何」

「2人きりになった時のお前…凄い目で俺のこと見てるんだぜ?」

 

「…っっ!!!」

 

 

 


不意に息を飲み込んだ。

想像だにしねェところに指の感触。

 

 

 

 

「お前も男だしさ、俺のこと可愛いとか喘がせてェとか思ってたんだろうけどよ」
「っ、あ…ぁ、やめ…ろ…」
「ホントはそんなんじゃねェんだろ?」
「何がっ…ぁ、指、ゃ…っ」

可愛いとも思った。
喘がせてェとも思った。
とにかく、コイツのそういう感じてる顔が見たかったんだ。

俺によって昇りつめるコイツが見たかった。

 


何が違うってんだ。

 

 

 


「ぁ、あぁあああぁああぁぁっ?!!」

 


「土方君さァ…」


身体の芯に走る電撃。

コイツに出会わなければ、きっと一生知らなかった急所。
こんなトコに…

 


「まだわかんないの?」


何がだよ!!

俺のどこがおかしいってんだ?
そりゃ、野郎のテメェをどうこうしてやりてェなんて、気違いとしか思えねェけどな。
でも、それだけだろ。
相手がテメェだって事以外、何の問題もねェはずだ。

思いっきりゲキ飛ばしてやりたくても、中の急所を指でグイグイ押してきやがって…


「万事…ゃ…あ、マジ、やめ…」
「こんなに締め付けてくれちゃって…」
「も…ゃ、あ、ィ…ク」

中の刺激があまりに強くて…
その強さも絶妙で…

万事屋の腕を握り締めて懇願した。

 

 


「よく自分の姿見てみろよ」


その声に少しだけ我に返った。
快感を追うだけの自分の身体を、改めて見回す。

「ぁ、ゃ…違っ…」

ケツん中弄ってもらうために、惜しげもなく開かれた両脚。
既に2発目を蓄えきった股間に、唖然とした。

「…な?何か変だろ?」

嘘だろ…
そんな、この俺が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


それは、ひとつだけ願いが叶うという。

 

 


その願いが困難であればあるほど…


その代償が身に降りかかるという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


まさか…

その「代償」ってのが、コレなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あァ…


俺としたことが。
こんなところでしくじるなんてな。
コイツとどうこうしてェ気持ちに急かされて、ツメが甘かったか。


「コイツを犯してェ」
って、願うべきだった。

もう、今更遅ェけどな。
俺の身体も心も、コイツの身体も心も。

 


あ、いや…

コイツの心は、ねェか。

 

 

 

 


「認めたかよ…」

ガッチリと目が合った。

万事屋と目が合うことなんざ、珍しくも何ともねェ。
日頃からガンくれてやってるからな。

でも、目の前の万事屋のツラが、異常に男を感じさせやがった。
いや、どっちかって言うと男より雄だな。
まさか俺がこんな風に感じるなんて、思ってもみなかったよ。

 

「なァ…」
「     っ!!」
「コレ…」
引き寄せられて握らされたものは、その一瞬でわかるほど立派だった。
宝の持ち腐れってのは、まさにこのことだな。
こんなにデカくて硬くて…
相手の女、絶対悦ぶに決まってんのにな。

勿体ねェ…

 

 

 

そう思った途端、俺の中に感じたこともねェ感覚が覚醒した。

あるはずもねェ、女の感覚が。


野郎の生臭ェチンポを旨そうだと思っちまう。
涎が止まらねェ。
俺のすべてで万事屋を受け止めたくて、その口さえ開いた。

焦るように万事屋のズボンを脱がしにかかると、死んだ魚の目は少し驚いて見せた。
期待通りのエグさを湛えたブツ。
自分自身のでさえ、こんなにまじまじと見たことはねェ。
ホント、卑猥な形してやがるよな。
何がどう合理的だって、こんな形になったんだ?

目の前のブッてェ肉棒に、思わず喉が鳴る。
こんなに何かにしゃぶりつきてェと思ったことなんか、一度もねェよ。
でも、一度欲しいと思ったら、もう止まらなかった。
しとどに濡れた唇で一気に喉まで送らせる。

 


信じらんねェ…

俺…

チンポ咥えて、気持ち悪ィどころか発情してるじゃねェかよ。
さっきから俺の中の女の部分が、万事屋の雄を感じてビクビクしてる。
自分だったらこうされてェと、ひたすら万事屋を誘う。

「お前、エロ…」

初めて見る万事屋の表情が、やたらと俺の腰を刺激する。
気持ち悪いようなくすぐったいような万事屋の指で、俺の中は明らかに変わり始めた。
たまに掠めるイイトコに、物足りなささえ感じるようになってたりして。

もっと強い、太いのが欲しい。
確実な衝撃をくれるものが。

 


あァ…

そうだ。

 

コレがいいや。

 

「ん?どうした?」

「よ、万事屋…」
「?」
「コレ…指じゃなくて…」
「・・・・・・・」
「コレで…俺を…っ」

舌から糸を引かせて、気持ち悪ィぐらい求めてみせた。

 

「お前さ・・・・・・」

やっぱり、それはマズかったか?
さすがにコイツでも引いたかな。


「俺が…気の遠くなるような我慢をしてるってェのに」

は?

「そんな可愛い顔で誘うんじゃねェよ」

コイツ、何言ってんだ。

「せっかく布団ぐらい敷いてやろうと思ってたのに」
「ちょ…テメ…」
「気持ち悪くねェかとか、痛くねェかとか、もういろんなこと心配してたってのによォ…」
「ぁ、やめ、ろ…っ」

俺の抵抗の声に耳もくれず、万事屋は俺を壁にもたれかけて座らせた。
目の前の万事屋は俺の下に腰を入れ、俺を抱きかかえる。
何がやりてェんだ?

「自分を制御できねェ俺が悪ィけど…」

 

 

「自覚のねェお前だって悪ィんだぜ?」
「何…っ…」


腰を強く掴まれ、身の毛の弥立つような感触をケツに感じた。

 

ちょっと待て。
マジかよ…

 

 

 

 

「っ、あ…ァ  ぁあああァあぁアあっ?!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そりゃ、欲しかったけど。
俺からせがんだけど。

 


どうしよう…って、考える暇もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


うわ…
万事屋が…

 

 

 

 

 

 

 


「すっげェ…中、ギュンギュン締まる」
「ぁ、アホ…っ」


あれだけ指で弄くられてたもんだから、痛みこそさほどねェが、身体の抵抗は半端ねェ。
それでも、自分を犯す男のツラを間近で見るのはキツイ。
俺の情けねェ表情もコイツにモロ見られてるってワケだし。

 


「土方…」

まただ。
この声。
思わず肩がビクリと震えた。

 

「悪ィな…」

「なっ、にが…っ」

 

万事屋の表情が少し苦しそうなのは、快感のせいか、それとも違うのか。
短い吐息の合間に、途切れ途切れに紡がれる。

 

 

「コレ、お前苦しいだけだよな」
「?」
「野郎のお前に抱かれる悦びなんざあるわけねェ」
「・・・・・・・・」

そうでもねェと言うのも恥ずかしくて、俺は目を逸らした。
だいたい、察しろってんだ。
俺がこんな簡単に掘られる男だと思うか?

苦しいとわかってる行為を甘んじて受け入れてるのは、他でもねェ。

それは、お前が…

 

 

「ゴメンな…俺、気持ちよくて堪んねェわ」

 

 

 


「・・・・っ!!!!」

 

 

 


完全に胎ン中で感じた。

 

 


そう。
俺がほしかったものはコレなんだ。
この際、俺が女だろうがそんなのどうでもいい。

俺に感じて。
俺で感じて。


俺を感じて。


最後の瞬間は、お前ン中俺だけにしてほしい。

 

 

 

「ん…この体勢、動きにくいなァ」
「ぁ、え?あァ?!」
「よいしょ…っと」
「ぅ、わ!!!」

体重を冷たい床に預け、視界にはもう万事屋だけ。
天井さえ見えやしねェ。

俺の顔の両脇につかれた万事屋の腕。
ツラを見るのが恥ずかしくて少し右にそむければ、コイツの象徴とも言える青いウズマキ柄。
それさえ俺の脳内を犯す。
もう、どこを見ても俺には万事屋しか感じられねェ。

「もっと他に燃える体位もあるんだろうけどよ」

万事屋の動きに揺れる身体。

「正常位…って、よく言ったモンだな」

しかも、結構当たる。
チンポの形の何がどう合理的だと思ったが、スゲェじゃねェかよ。
もう、ホントにスゲェ。

「ぁ、あァ…っ…」

噛んでも噛んでも噛み切れねェ。
いつの間にか快感に変わった苦しみは、余計に俺を狂わせた。

「ょ、万事屋ァ…っ」
「なに…」

「こんな、俺っ、終わったら…忘れろ、よ…っ」


そんな趣味も性癖もねェだろうコイツに、俺との情事なんざ気持ち悪ィ以外の何でもねェはずだ。
ただ溜まってたんだろう。
攘夷の粉のせいだろう。
あの薬がどう作用してるか知らねェが、無理やり体動かされてるに違いねェ。

だから、こんな俺の姿…
あとでキレイさっぱり忘れてくれ。


正直、俺はテメェを失いたくねェんだ。

 

 

「はは…っ」

それは、翳りのねェ純粋な笑顔。

「忘れてなんかやらねェよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ぅあァ…ん、ぁあ!あぁァ…っ、あ、あッ!!!」
「土方…」
「も…そこ…ダ、メ…っっ」

普段の腑抜けた瞳孔を絞らせ、身を喰いちぎるように奥を抉る。
濡れねェ俺の身体が淫猥な音を立ててやがる。
コイツも結構キてんな?

「なァ…俺の名前、知ってる?」
「しつ、っけェ…って」
「呼んでよ…」

 

唇を噛んで抗って見せれば、突き上げはさらに強く速くなった。

もう、前立腺しか狙ってこねェ。
万事屋のデカいカリが物凄ェ引っかかって、目が眩みそうになる。
快感を引きずり出す万事屋の腰が、俺を一気に絶頂へ追い上げた。


「ょろ、ず…屋ァ…あ、ィ…ク…」


「ねェ…頼むから…」
「ァ、あぁァあっ!!万事屋ァっ!!!」

 

「ん…悪ィ…俺、中に出す…」


もう勝手にしやがれ。
精液でも何でも全部中にブチまけろ。
テメェの何もかも俺にくれよ。
他の誰にもくれてやるな。

「もぅ…イキそ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


願わくば、その魂も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十四郎…ッ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に、僅かな理性も吹き飛んじまった。

 

 

 

 

 

 

 

 


銀時…


銀時
銀時
銀時

 

銀時
銀時

銀時
銀時
銀時
銀時

銀時

 

銀時
銀時


銀時

 

 

 

 

「ぎ…銀時…」

 

 

 

 

 


万事屋の背筋がビクリとはね、噛み締められた奥歯から喘ぎ声が漏れた。

狂ったように肉壁を擦られ、前立腺を潰される。
ケツに打ち付けられる腰の強さが、ただ俺を興奮させた。
性欲に蹂躙された野郎二人の可愛くもねェ嬌声が、じっとりと湿った部屋に響き渡る。


「ぁ、ィ、イク…っ…!!!!!」

 

叫んだのは俺だったか万事屋だったか。

 

それまで信じられねェ速さで俺の中を犯してた万事屋。
深く奥へと激しく捩じ込んできやがった。
確実に俺を孕ませるように、肉杭を強く強く。

もっと欲しくて、床を掻いていた手で万事屋を抱き寄せた。

 

 

 

「ァあぁあ、ぁあ、ア、あああっ、ァあ…ぁああぁアアぁアあああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 


それはもう…

 

この世のものとは思えねェ快感。

 

 

 

 

 

 


「銀ッ   と          き        !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腰の奥で蠢いていた衝動が脳天を突き破り、思考回路が焼き切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ビクビクと身体を震わせて、年甲斐もなく精液を噴き上げた。
感じるまま、何度も。
俺の奥にガツンガツン当てながら注ぎ込まれた精液に、もう一度イカされて。


俺の意識もトロリと蕩けてなくなっちまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと気がつくと、見知らぬ天井。

傍にあった時計に目をやったが、思ったほど寝てねェ。

 

頭ン中整理しているうちに、襖からのっそりと万事屋が現れた。
手には、1リットルの「イチゴ牛乳」。

 


「飲むか?」

 

 


一線越えた者同士の、あの独特の距離感。
近しいでもなく、馴れ馴れしいでもねェ。

アイツが俺の中に一歩踏み込んできたその心地よさに、つい頬が緩んだ。

 

 


「お前さ、今日時間あんのか?」

あ、そう言えば、近藤さんが9時から飲み会するからって…

「まぁ、少しは…」
「じゃあ、もうちょっといろよ」
「は?」
「あ、それと…コレやる」

そう言って寄越したのは、スーパーの袋。
中にはマヨネーズが1本。

「さっきお前が寝てる間に行ってきた…まさか今日来るとは思ってなかったからよ」
「え…何?怖…」
「別に裏なんかねェよ!失敬な!!!」

いや、だってテメェが俺にこんな…
ありえねェだろ!!


怪訝な表情をやめずにいると、万事屋が不貞腐れたように口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとうって言ってんだ…」