江戸一番の盆踊り大会も、無事終了。

 

屯所に戻った俺たち幹部には、もう一仕事。
結成以来、抗争で亡くなった隊士たちの盆供養。

尊い魂に差別かも知れねェが、幹部と平隊士に分けて名前が書かれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


誠斎伊東鴨太郎武明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夥しい数の戒名を撫でていた視線が、ぴたりと止まった。

 

 

 

 

 


俺はアイツのあの、生っ白い髪の色が嫌いだった。
人をバカにしたような妙に甲高い声も。
インテリを自負したような、わざとらしいメガネ。

いや、もうホント、マジ全てが気に入らなかった。

 

 

 


「黙祷」

 

 

近藤さんの声に目を閉じた。

 

アイツの憎らしいツラが脳裏にいっぱいで…

 

 

 

 

 

 

涙が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

お前を殺すのは俺だって言っただろう。


最期お前を斬りつけたのは、俺だって言うのか?
物理的には…まぁ、そうなるな。

俺は、あんなモノ望んじゃいなかった。
もっと本気でぶつかって…
俺もお前もボロボロで…

 

最期は、誰も見極められねェぐらいの相討ち。

お互いに「俺の勝ちだ」って、笑いながら死ぬんだ。

 

 

お前だって、俺を手にかけるって言ったじゃねェか。
約束破ってんじゃねェよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前に会いてェ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


俺は、不覚の涙を隠すので精一杯だった。


夜は感情的になっていけねェ。
さっさと寝ちまおう。


でも…
今日はアイツが戻ってくる。

「よいしょ」

襖を開けると、思いの外涼しい夜風が吹き込んできた。
蚊に入られちゃ面倒だが、この風は勿体ねェ。

見ろ、最近の蚊取りは煙も臭いもなしだ。
電池一個で2ヶ月ももつんだぞ?
凄ェだろ。


フィィィ…と、遠慮気味に蚊取りのファンが回る。

タバコの箱が遠くて、取りに立つ気にもならねェ。

 

 


「伊東…」

 

夢現で、そう呟いた。
びっくりするような憂い声。

 

 

 

 

 

 

 


白っぽい気配。


耳朶を舐められたような、甘い痺れ。

 

 

 


「土方君」

 

 

 

 

 

視線だけで返事をすると、あの頃と同じ、いけ好かねェ笑顔。

 

「君に嫌がらせでもしようと思ってね」


「アホか、他に戻る場所ねェのか」

 

 

 

 

 

 

 

 


いいトコ育ち独特の柔らかい匂いと、誰も知らねェだろう、コイツの本当の優しさ。

生身の俺が触れられんのかとか、霊に体温あんのかとか…
考える余裕もなかった。

「君が呼んでくれたんだと思ったんだけどな」
「自惚れんな…殺すぞ」
「ははvもう死んでるけどね」


息が詰まりそうだ。

コイツがもう死んじまってるという事実。
変えれるモンなら、どんな努力だってするのに。

伊東はもう戻らねェ。

 

「泣くなよ…」

伊東が俺を撫でる。

何だって、俺はこうも従順に成り下がっちまうんだ。
こんなガキみてェに扱われて。

 

床に四肢を投げ出して、俺は伊東に縋りつく。

 

「どうして欲しいの?」

 

 

 

 

「俺に…お前を分けてくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


寝床まで移動する時間も惜しいのか。
それぐらい我慢できねェのかよ。
まったく、中2か?


「んん…伊東、ォ…っ」

なんでこんなに巧いのか、何されても気持ちイイ。
指でケツめちゃくちゃに掻き回されて、スッゲェ場所刺激されまくって。

チンポ扱かれてもいねェのにイキそうで、太ェ杭撃ち込まれても痺れるだけ。

「わかるよ、気持ちよくなっちゃったね…ボクにも伝わってるよ」
「ぁ、あッ…ん、ァ…」

伊東が奥までくるたびに、濡れた音がケツから響く。
野郎のクセに、突っ込まれて中から濡れるなんて。

俺ァ、どうなっちまったんだ。

 


「そんな「分けて」なんて遠慮しないで…ボクを全部あげるよ」
「ひ…あッ、ぃと…ッ」

普段の俺が出そうとしたって出ねェような、高く甘い嬌声。
伊東が送ってくる激しい衝撃に、もう振り落とされそうだ。
解れていく理性をどうにか固めようとしても、快感の波が激しすぎる。

「ぅあ、あァァ…っ」

 

引いては突き込み、突き込んでは引き…
俺の中で硬ェ肉棒が高速ピストン。
それを舐めるように、俺の肉壁が纏わりついてるのがわかる。

「イキそう?」

伊東の腰が止まる。

 


あァ…
なんで止めるんだ?
突いてくれ…
お前の言うとおり、もう俺ァイキそうなんだよ。
刺激が欲しくて、ケツん中ビクビクしてやがる。
わかるだろうが。

俺の中の奥深く…
ちょうどお前の先端がガッツリ当たる、そこ。
何もかも手放してしまいそうになるトコ…


「突け…っ、頼む…奥、突いて…」

 

 

 

 


打ち上げられた魚みてェ。

 

奥歯鳴らして、爪で空を抉る。
激情に身体追い上げられながら、やっとの思いで浅い息をつく。

悲鳴を上げたくなるような、強い快感。
必ず負けちまう本能。

 


「全部…ボクに見せてくれ」

 

 

硬く勃った乳首を、甘く摘み上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

発射スイッチだったみてェ。

 

 

 

 

 

 

 

 


もう…

 

ダメ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あぁぁァァァ・・・・・・・・・      ッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

伊東…

伊東
伊東
伊東

 

伊東ッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「好きだァ…っ!!」

 


涎も精液も涙も、何もかも…

止められなかった。

 

 

 

「土方…く、ん…っ」


震える俺を強く抱いてくれた。

 

 

 

胎ン中に迸るアイツの想い。

受け止めてやろうと思ったのに…
もう、頭真っ白。

 

 

 

朦朧とする意識の中で見たアイツは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣き笑い。

 

 

そりゃもう、せっかくの男前台無しの汚ェツラだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようごぜェやす、土方さん…」

「んァ…総悟か…おはょ」
「俺ァ、てっきり土方さんを恨んで死んだ霊に、連れて逝かれたと思ったんですがねィ」
「・・・・・・・・」
「うまくいかねェモンだ」
「このヤロ・・・・・っ?」


「?」


ん?

 


「トシぃ、おはよう…今日お前も午前中非番だな?どうする」
「あァ…おはよ…」
「そこの和菓子屋で団子配るって言うんだけど、貰いにいかねェ?」
「あぁ、そうだな…行くか・・・・・・・っ??」

 

あれ…
やっぱ変だ。

 

「トシ?」

 

なんか…

 

「どうした?腹痛ェか?」
「いや…」

 


確かに感じる…脈、いや、鼓動。
俺の胎内に響くもうひとつの何か。

 

 


伊東の野郎…

何しやがった。
 

 

「ちょっと…病院行ってくるわ」

「どこも盆休みだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


アイツの想いが精液と一緒に流れ込んだのか。

 

 

 

 

それとも…


まさか…

 

 

 

 

な。