兼定が直り、あの妖刀は俺の元から去った。
それ以来、あのヘタレた人格が出てくることは、そうなくなった。
俺が一度妖刀に打ち勝ってから、コントロールできるようにもなってたんだがな。
最近じゃ、だいたいどんなタイミングで現れるかがわかってきたぐらいだ。
ざまァ見やがれ。
この俺が、あんな刀1本扱えねェ男だと思うな。
それでも恐ろしいのが、この時間…
「美少女侍トモエ5000!見参っ!!」
危うく乗っ取られそうになる意識に、必至でしがみつく。
アイツが現れるときの、嫌な浮遊感。
極度の興奮状態に陥ると、アイツを抑えきれなくなる。
アニメオタクの、トッシー。
毎日でもねェんだが、ふとテレビの前に座り込んでる俺がいる。
時間はいつも決まって、夕方の5時ちょうど。
しかも、今日は1時間スペシャル。
アイツの「気」が俺の中で膨れ上がる。
いつもなら、オープニングをやり過ごせば消え失せるんだが。
治まるどころか、マジで負けそうだ。
「ぅ、くぅっ…」
気を失わねェように、奥歯を噛み締める。
額には脂汗。
そんなにこのアニメが見てェのかよ。
でも、俺の体は好きにさせねェ。
させてたまるか。
今までにねェ、頭痛と耳鳴り。
ダメだ、強ェ。
「ぁ…あッ…」
負ける…!!
「…ん?」
あれ?
立ち眩みが治まったように、意識がはっきりと戻ってきた。
あ…大丈夫だったみてェだ。
なんとかやり過ごしたか。
「ふー…」
俺様に勝とうなんて100年早いわ。
汗だくに似合わねェ台詞を思い浮かべて、俺はテレビを消した。
まだやり残した仕事があんだよ。
近藤さん一人には任せてらんねェ。
そう思って、会議室に戻ろうとした。
その時。
「あーーー!!!ちょっと、消さないでほしいナリ!!」
あぁ、お前か。
「ったく、俺は仕事に戻るから…勝手に見てろ」
そう言って俺は仕事に…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
「ぅァあああああああああああああ?!!!!!!」
そこには俺がもう一人いた。